症状別コラム

肩こりを揉んでも治らないのはなぜ?岩槻のデスクワーカーに多い「肩甲骨」が動いていないパターン

2026.07.21

肩こりは、揉んでもなぜ治らないのですか?

マッサージで筋肉をゆるめても、その場は楽になるのに数日でまた同じ場所がこる——多くの方が経験する現象です。これは、肩こりの多くが「筋肉の緊張」そのものよりも、その奥にある「肩甲骨が動いていない」という状態から起きていると考えられるためです。凝った筋肉を揉んでも、肩甲骨が動かない生活パターンが変わらなければ、同じ場所に負担が戻ってきます。

この記事では、その理由を機能解剖学(腕と肩甲骨がどう連動して動くかの力学)神経学(その筋肉を脳と神経がどう使っているか)の両面から解説します。ここが分かると、「揉む」以外に何をすればいいのかが見えてきます。

【機能解剖学】腕を上げる動きは、肩関節だけでは足りない ― 肩甲上腕リズム

まず知ってほしいのが、腕を上げる動作は、肩関節だけで行われているのではないという事実です。解剖学の教科書では、腕を横に上げる(外転する)とき、肩関節と肩甲骨がおよそ2対1の割合で連動すると説明されています。たとえば腕が60°上がるとき、肩関節そのものが40°、残りの20°は肩甲骨が上向きに回旋することで生まれます。この連動を肩甲上腕リズム(けんこうじょうわんリズム)と呼びます。腕をスムーズに高く上げられるのは、肩甲骨がタイミングよく一緒に動いてくれるおかげなのです。

肩甲骨には3種類の動きがある

肩甲骨は、体幹に対して大きく分けて「側方の動き(外側・内側へ滑る)」「垂直の動き(上げる・下げる)」、そして「上方回旋・下方回旋(回る)」の3種類を組み合わせて動くとされています。デスクワークで腕を体の前に固定したままキーボードやマウスを操作し続けると、肩甲骨のこの3種類の動きがほとんど使われない状態が続きます。前鋸筋(ぜんきょきん)・僧帽筋(そうぼうきん)・菱形筋(りょうけいきん)といった肩甲骨を動かす筋肉群は、動かないまま同じ位置を保持し続ける仕事を強いられます。

肩甲骨が固まると、なぜ首や肩が代償するのか

本来、腕を使う動作では肩甲骨・鎖骨・胸椎が連動して負担を分散しています。しかし肩甲骨が固定されて肩甲上腕リズムが崩れると、肩甲骨が担うはずだった動きの分を、首や肩の筋肉が代わりに引き受けることになり、負担が集中します。体の土台(肩甲骨まわり)を動かさず、末端(首・肩)だけで作業を続けているような状態です。マッサージで首・肩をゆるめても、土台の肩甲骨が動かないままだと、また同じ場所へ負担が戻る理由がここにあります。

そもそも"コリの芯"を正確に捉えられているか

もう一つ、見落とされがちな視点があります。施術の専門書では、押すと強い痛みが響く箇所をトリガーポイント(筋肉の緊張が局所的に溜まった点)と呼びますが、触れて張りを感じる箇所のすべてがトリガーポイントとは限らないと指摘されています。まれに、肋骨の後方への出っ張りなど骨格そのものの構造を、筋肉の硬さと勘違いしてしまうケースもあるとされます。マッサージで"効いている感覚"があっても、実際に緊張の芯を的確に捉えられているとは限らない、ということです。

さらに、筋膜のつながりを研究する専門書では、肩の位置がずれると、そこから続く筋膜のライン(アームライン)を介して、肋骨・頸部・呼吸機能・腰部にまで影響が及びうると指摘されています。肩こりだからといって肩まわりだけを揉んでいても、負担の発生源が呼吸の浅さや腰の使い方にある場合、そこを見逃してしまいます。肩甲骨まわりを"点"ではなく、体全体とのつながりの中で見る視点が必要です。

【神経学①】揉んでも戻るのは、筋肉の"使われ方"が変わらないから ― 運動単位のサイズの原理

ここから神経学の視点です。筋肉は、運動単位(うんどうたんい/1本の運動神経と、それがつなぐ筋線維のまとまり)という単位で脳から動かされています。脳科学の教科書では、力を出すとき運動単位は一定の順番で、小さいものから順に動員されると説明されています(これを"サイズの原理"と呼びます)。小さい運動単位は疲れにくい代わりに、弱い力でずっと働き続ける担当です。

ここに肩こりの落とし穴があります。デスクワークで肩甲骨を固定した姿勢を保つとき、必要なのは"弱い力での持続"——つまり同じ小さな運動単位が、何時間も休みなく使われ続けるのです。疲れにくいはずの担当筋が、休憩なしの長時間労働で疲労し、こりとして現れます。ここでマッサージをして筋肉を一時的にゆるめても、「同じ運動単位を使い続ける姿勢・動作」そのものが変わらなければ、翌日また同じ筋が働き続け、こりは戻ってきます。これが"揉んでも戻る"の神経学的な正体です。

【神経学②】そもそも「肩甲骨を動かす指令」が出ていない ― 運動学習

もう一つの神経の問題は、肩甲骨を大きく動かすという運動指令が、そもそも普段ほとんど出ていないことです。長年デスクワークを続けると、「肩甲骨を寄せる・回す」という動きのプログラムが、脳の中で眠ったような状態になります。頭では「肩甲骨を動かそう」と思っても、その筋肉をうまく働かせる感覚が分からない——これは意志の弱さではなく、使っていない運動プログラムが鈍っているためです。

脳や神経は、正しい動きを繰り返し経験することで回路を作り変えていく性質(神経可塑性)を持っています。眠った「肩甲骨を動かすプログラム」を呼び覚ますには、正しい動きを反復して脳に定着させる=運動学習が必要です。単発でストレッチするだけでなく、繰り返して"無意識でも肩甲骨が動く"状態にしていくことがカギになります。

岩槻 整体Re.Lifeでの考え方:整体×マシンピラティスを組み合わせる理由

以上から、当院のやり方の意味がはっきりします。まず整体で、僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋など凝りやすい筋肉の緊張をゆるめ、固まった肩甲骨が動ける状態をつくる。そのうえでマシンピラティス(リフォーマー)で前鋸筋・下部僧帽筋を使い、肩甲骨を意識的に動かす練習を繰り返して、肩甲上腕リズムと"肩甲骨を動かすプログラム"を運動学習として取り戻す。ゆるめる(機能解剖学的な可動性)と、使い方を変える(神経学的な再教育)を同時に進めるアプローチです。詳しい体の仕組みは肩こりページ肩甲骨まわりのページで系統別にまとめています。

マシンピラティスはリフォーマーが体を支えてくれるため、普段運動をしない方でも、肩甲骨まわりの筋肉を無理なく正しいフォームで使う練習ができます。「揉んでゆるめる」だけでは届かない、"使い方"そのものを変えることを目指します。

デスク環境を整えることも並行して大切

モニターが目線より低い、肘が浮いた状態でキーボードを操作しているなど、デスク環境自体が肩・首に負担をかけている場合もあります。環境を整えることと、肩甲骨を動かす練習を行うことは、どちらか一方ではなく両方を意識することが大切だと考えられています。1時間に一度、肩甲骨を大きく回すだけでも、同じ運動単位を使い続ける状態を断ち切る助けになります。

肩こり よくある質問

Qマッサージは意味がないのですか?

そんなことはありません。強く張った筋肉をゆるめて肩甲骨が動ける状態をつくる、という点でマッサージや整体は有効です。ただ、それ"だけ"で終わると使い方が変わらず戻りやすいので、動かす練習(運動学習)とセットにするのが効果的、という位置づけです。ゆるめる担当と、動かし方を覚え直す担当を分けて考えると、それぞれの限界と役割がはっきりします。

Q自宅ではどんな運動をすればいいですか?

肩甲骨を「寄せる・下げる・回す」動きを、痛みのない範囲でゆっくり大きく行うのがおすすめです。回数をこなすより、肩甲骨が動いている感覚を意識することを優先してください。感覚がつかみにくい場合は、一度専門家と一緒に動きを確認すると近道です。姿見で肩甲骨の動きを目で確認しながら行うのもおすすめです。

Qどのくらいで変化を感じますか?

眠った運動プログラムを呼び覚ますには繰り返しの時間が必要なため、数回で完全に、というより、続けるなかで「肩が軽い時間が増える」形で変化を感じる方が多いです。

Q強く押してもらったほうが効きますか?

そうとは限りません。トリガーポイントへの刺激は、強さよりも正確な位置と、力を抜いて反応を見ながら行うことが大切だと専門書でも指摘されています。強い痛みを我慢して押し続けても、筋肉が防御的に硬くなり逆効果になることがあります。「痛いけど気持ちいい」程度の圧で、呼吸を止めずに受けられる強さが目安です。強すぎる刺激は、その場所とは関係のない筋肉まで緊張させてしまうこともあるとされています。

こんな方は医療機関への相談も検討してください

腕や手のしびれ、力が入りにくい、安静にしていても続く強い痛みなどがある場合は、整体の範囲で判断せず、医療機関での確認をおすすめします。首の骨や神経が原因になっているケースもあるため、自己判断で様子を見続けず、早めに専門家へ相談することをおすすめします。当院では特定の疾患の診断・治療は行っておりません。

まとめ

  • 【機能解剖学】腕を上げる動作は肩関節と肩甲骨が2対1で連動する(肩甲上腕リズム)。肩甲骨が固まると首・肩に負担が集中する
  • 【神経学①】デスクワークでは同じ小さな運動単位が長時間使われ続け疲労する。揉んでも"使われ方"が変わらなければ戻る
  • 【神経学②】肩甲骨を動かす運動プログラムが眠っている。呼び覚ますには反復による運動学習が必要
  • 整体でゆるめ、マシンピラティスで肩甲骨を動かす練習を繰り返すことで、負担が戻りにくい状態を目指す

「マッサージに通っても、また同じ場所がこる」という方は、肩甲骨の動きと"使い方"から一度見直してみませんか。料金プランはこちら

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の症状の診断・治療を保証するものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。

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